『ふぞろいの林檎たち』を語ろう 〔誰が主役か分からないドラマ〕偏差値教育、管理社会に一石を投じた傑作   

2013年 07月 08日

「ふぞろいの林檎たち」偏差値教育、管理社会に一石を投じた傑作


『ふぞろいの林檎たち』を語ろう

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「ふぞろいの林檎たち」偏差値教育、管理社会に一石を投じた傑作

〔あの日を旅する〕サウダージ第90回1983年6月24日~6月30日
あのテレビ、あの場面    週刊現代2013/7/6号

学歴社会と向き合って、
丁寧な心理描写や、
ハッとさせられるようなセリフまわしで人気を得た『ふぞろいの林檎たち』。

その後もシリーズ化されていまだその余韻が残る、
山田太一脚本による「刺さり続ける」ドラマだ。

最近ではこのドラマの中井貴一のモノマネをする芸人が登場するなど、
いまでも色あせていない。
三流でもない「四流」大学に進学してしまった青年3人と、
そのガールフレンドたちが織り成す偏差値教育、管理社会に一石を投じた作品。

非エリートのほうが圧倒的に多い社会のなかで、
自信をもらい、考えるキッカケをもらった人も多いのではないだろうか。

学歴という価値基準が偏重されていた時代、
「規格品」を尊重する社会を、ふぞろいの林檎たちを描くことで品よく批判した。


真面目からではなく、やんわりとおしゃれに批判したことがヒットの要因だった。

サザンオールスターズの主題歌『いとしのエリー』や、
劇中で流れる『Ya Ya』なども印象深い。

あの曲を聞いただけで、仲手川(中井貴一)、岩田(時任三郎)、西寺(柳沢信吾)、陽子(手塚理美)、綾子(中島唱子)、晴江(石原真理子)の顔が思い浮かぶ。
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「あんなにやったのにって思うけど、
きっと顔のいい奴と悪い奴がいるみたいに、
脳味噌も平等には出来てないんだよね。
出来ないからって、努力してないじゃないんだけど」
仲手川のセリフである。

学歴差別される側の理屈を代弁してくれたと思った人も多いだろう。

同時に、背が低いこと、お金持ちでないこと、
地方に生まれたことのコンプレックスに対して、
このセリフが示唆するものは大きい。
決して悪いことではないのだと、大人になってから気づく。

学歴、恋愛、家族。
重いテーマであるが、箴言とともに
「あなたも自分と向き合いなさい」と諭されるような気持ちで観ることができる傑作だ。
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【平蔵の独り言】
非エリートのほうが圧倒的に多い社会のなかで、
学歴という価値基準が偏重されていた時代、
「規格品」を尊重する社会を、ふぞろいの林檎たちを描くこと。

この言葉が全てを語っているような気がする。

偏差値教育、管理社会の価値基準と学歴差別を感じて、
理不尽さ息苦しさの中で足掻きながら「規格品」になること
『ふぞろい』でいけないの?

その10余年前の70年安保を境目にして、
『規格外』見ないように社会も個人も避けてきた時代が今まで続き
今年度末の国の借金 1100兆円(1%として、10兆円は利払いに消えていく)

“いちご白書をもう一度”
就職が決まって髪を切ってきたとき、
もう若くないさと君に言い訳したね!

この国はどこへ行くのか(心配だ!)

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『ふぞろいの林檎たち』を語ろう


山田太一(脚本家)×大山勝美(プロデュース)

週刊現代(2012/5/19号) 今週のディープ・ピープル
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〔誰が主役か分からないドラマ〕

(大山)『ふぞろいの林檎たち』というタイトル、
打ち明けますと『3年B組金八先生』の「腐ったミカン」ヒントなんです。
腐ったミカンが一つでもあると、
周りのミカンも腐ってしまうから、すぐ捨てたほうがいい、というあの寓話。

(山田)そうそう。
エリートではなく、落ちこぼれの規格外品に光を当てるようなドラマをやろう、
と大山さんと話していて、
四流大学に通う大学生の群像劇にすることまで決まっていた。
それでスタッフで集まってタイトルを考えているときに、
箱から取り除かれてしまう「腐ったミカン」はつらいねって話になって。

(大山)イギリスに留学経験のあるスタッフが、
「向こうで売られている果物はみんなバラバラふぞろいだ」
と発言した。
(山田)それで「ふぞろい」をいただいた。
そこにミカンではなく林檎が結びついたわけです。
(大山)ロケ地、大学のキャンパスを使わせてもらえなくて困った。
「四流大学」という設定が問題で、
どこも「うちは四流じゃありませんから」って断る。

(山田)キャスティングも大変でした。
誰が主役だかわからないドラマを書こう、という企画でしたから、
メインの男女8人に優劣がつかないよう、
主役級のスター俳優は使えなかった。

(大山)3人目の女性は美人じゃないほうがいい、と
「自分の容貌に不自由を感じている人」
という条件で募集した(笑)。
そうしたら、新聞記者が面白がって書いたものだから、
ものすごく応募が多かったんです。
(山田)ところが、ちっとも容貌に不自由してそうにない人ばかり来た。
(大山)しかも、女性ってのは面白いもんで、
そういうオーディションでも自分が一番よく写っている写真を送ってくるんですよね。
こっちの狙いはそうじゃないんだけれど。

(山田)彼らが生き生き演技してくれたせいか、
よく「あのセリフってアドリブじゃないんですか?」と聞かれるんですが、
アドリブは一切なかったですね。
口調も口癖も一言一句台本どおりやってもらいました。
(大山)台本というのは、きちんと流れを計算して書かれている。
山田さんの脚本は特にそうですが、呼吸があるわけです。
アドリブが入るとその呼吸が乱れる。
(山田)それにしても『ふぞろい』が14年もシリーズが続くほど、
長く支持されるとは思っていませんでした。
(大山)たしかに。放送前は大学生モノのドラマは当たらないと言われていましたからね。
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〔あれから30年近くが過ぎて〕
(大山)大学生にニセモノだと思われないように、取材は入念にやりましたね。
(山田)まず早稲田大学を取材した。
でも、あまり面白くなかった。
それで、もうちょっとランクが落ちるとされる大学の学生に話を聞いたら、
ずっと面白かった。
成績がよくてスムーズに受験を乗り切った人ってのは、
学歴に関して感情のひだが少ないでしょう。
(大山)そう。
はじめは、大学に入った人と大学に入れなかった人の差をドラマにしよう、
話していたんですが、調べて見たら大学間格差のほうが大きかった。

(山田)取材した学生に、サークルの勧誘ビラを女子大の前で配るかと聞いたら、
「どうせ来てくれないから配らない」
と言うんですよ。「じゃあ、どんな女の子とつき合ってるの?」
と聞くと、看護学校の学生という答えだった。
(大山)看護学校も取材しましたね。
(山田)看護学校には、
看護師を目指して、人のために役立ちたいと思ってがんばっている人と、
看護学校しか入れなかったから仕方なく入ったという人の2種類がいた。
(大山)でもこうした取材の甲斐があって、
大学生の視聴者から
「俺たちの本当の気持ちをうまく描いてくれて嬉しかった」
という投書をたくさんいただいたのを覚えています。

(山田)大学生に受け入れられたのには、
BGMに使用したサザンオールスターズの曲も大きかったですよね。
(大山)主題歌に名曲『いとしのエリー』を選んだんだ。
『いとしのエリー』は『ふぞろい』用に作った曲じゃないんですが、
そういうイメージが強いようで、
サザンがコンサートで『いとしのエリー』を演奏すると観客から「ふぞろい!」
とコールが入るらしい。彼らは迷惑だったでしょうね(笑)

(山田)最初の『ふぞろい』が放送されてから、もうそろそろ30年です。
最後のパートⅣが‘97年ですから、それも15年前。
(大山)ありがたいことに、この歳になっても、
テレビ局の方から「大山さんの『ふぞろい』を見て放送局に入ったんです」と声をかけられることがある。
(山田)私も時折、「自分は“ふぞろい世代”なんです」と言われることがあるんですよ。
当時、大学生だった人たちです。もう五十路にさしかっている。
(大山)そろそろ“ふぞろい世代”も定年ですね(笑)。
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【平蔵の独り言】
『ふぞろい』・・・・いい言葉だと思う。
人は100人いたら100の個性(親も違う、育った環境も違う)
それを認め合いながら、人生を送っていくはずなのに
今はみんな同じではないと、不安?

“ふぞろい世代”が生きやすい時代が楽しいと思うのだが
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by asanogawa-garou | 2013-07-08 15:13 | 人生 まだ旅の途中 | Comments(1)

Commented by magonote at 2014-09-21 01:03 x
はじめまして。
社会に対するやさしい文章がとても心地よく感じました。

わたしはいまではどうどう規格外の人生を歩んでおります。(笑)
一旦はいいと言われている学校や会社とすすんだものの
やはり、違和感を感じ、海外にしばらく行ってのちに帰国しました。
いまでは規格外でないと出来ない仕事について楽しく暮らしています。
昔の方が、よかったと思うことは少ないわたしの人生ですが、
このドラマを思い出すとドラマや芸能に関しては断然昔のほうが
よかったなぁと思いますね。