〔堀文子×タモリ〕「座右の銘を持つようになったら、人間はおしまいです」   

2015年 02月 23日
〔堀文子×タモリ〕「座右の銘を持つようになったら、人間はおしまいです」
「空想を巡らせる、考えの深いお子様だったのでしょうね」(堀文子)
「私は幼稚園に行かなかったんです。道行く人を眺めて過ごしていました」(タモリ)


〔「嫌い」なことは大声で言っていい〕
(堀)私の嫌いなものを大好きな方もいるから、遠慮していましたが、
間もなくあの世に渡りますので、この頃嫌いをやっと言えるようになりました。
(タモリ)私も最近は、嫌なら怒ってもいいんだと思えるようになりました。

『起承転結の“結”は、恰好つけるためだけのものです』(堀)
『座右の銘もそうですね。所詮、他人の言葉ですから』(タモリ)


〔「死ぬこと」に興味津々〕
(堀)皆さん起承転結がお好きだから。
私は「結」なしでこの世から消えていきますが……。
もう、近々なんですけどね。
これもまた興味津々で、実は興奮しています。
初めてですからね、「死」って。
『等伯以来、日本画が好きになりましたね』(タモリ)
『この年でようやく、絵がわかってきました』(堀)


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〔堀文子×タモリ〕「座右の銘を持つようになったら、人間はおしまいです」
『サライ』創刊25周年記念 特別対談 2014年11月号
堀文子さんが尊敬してやまないというタモリさんとの顔合わせが実現しました。
人生観、感性、好き嫌いなど共通するところが多いおふたりが時間を忘れて語り合います。

「空想を巡らせる、考えの深いお子様だったのでしょうね」(堀文子)
「私は幼稚園に行かなかったんです。道行く人を眺めて過ごしていました」(タモリ)
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(タモリ)いやあ、お変わりありませんね。
(堀)そんなことございません。
この世とお別れの日も近づいて参りましたので。
それより、あなた様こそお変わりありませんね。
16年前、雑誌の対談でご一緒しましたが、その時、長谷川等伯を絶賛していらしたのを覚えております。
(タモリ)ええ。『松林図屏風』ですね。
高校生の時に教科書に小さく載っているのを見かけまして、初めて「すごいな」と思いました。
(堀)ああいう地味な水墨画に感動する高校生がいた当時の日本文化の高さに驚き、
改めてあなた様の感性の並々でない鋭さに感服したことを覚えております。
等伯のあの松は奇跡の傑作です。
90年以上生きてまいりましたが、どうやって描いたのかわからない。
雨もようで遠くに霧がかかっています。
あんなふうに松をぼかすには、筆も紙もたっぷり水を含ませ、一気呵成にしあげた作品です。
絵の上に乗って描いたのでしょうか。
和紙ですから、西洋紙と違って破れやすいはずですし。
(タモリ)東京国立博物館に本物を見に行きました。
あの「にじみ」は素晴らしいと思い、
いろんな和紙を買ってきてはにじみだけ試みるのですが、うまくいかない。
やってみて等伯のすごさが一層わかりましたね。
ところで、描く時はどんなお気持ちですか。
(堀)白い紙を目の前にすると、逃げたくなります。
どうしていいかわからないし、恐怖はいつまでも消えません。
ですから、興奮しないと描けません。
私の場合は興奮より逆上に近いのです。
同じモチーフだと興奮しないから描けない。

(タモリ)誰の言葉か忘れましたが、かたちができると臭気が漂う、というようなことを言った人がいましてね。
定型ができてしまうと、何か嫌な臭いがすると。
(堀)でも巨匠になるには、同じかたちを描き続けたほうがいいのです。
富士とか桜とか。
私にはできません。
その時夢中になったものと果たし合いをするのです。
驚いたものしか描けないから、クラゲとか、雑草とか、巨匠が手を出さないものばかり描いてしまう。
私は師匠についたことがありませんから……。
あなた様は師匠はいますか。
(タモリ)私もまったく弟子入りしたことがありません。
幼稚園すら行きませんでしたから。
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〔「嫌い」なことは大声で言っていい〕
(堀)私も父から、感性の最もすぐれた幼児期にあんなところに行ってはならないと、
   幼稚園に行かせてもらえなかった口ですが、あなた様はどうして。
(タモリ)入園前に、近所の幼稚園を偵察に行ったら、
   園児たちが『♪ぎんぎんぎらぎら』と手のひらを回している。
   『こんなことできない』と行くのをやめてしまいました。
(堀)徳川家康は、幼稚園ぐらいの年齢で人質になっていたから、あれほどの武将になった。
(タモリ)でも、最初は後悔しましたね。
   今のようにゲームもなければパソコンもない。
   暇で仕方ない。
   だから玄関先に座って、道行く人を眺めて過ごしました。
   『このふたりの関係はなんだろう?』と想像したり。
   わからないと後をつけていったこともありました。
(堀)空想して、自分の考えをたぐるのがお好きだったのですね、小さい頃から。

(タモリ)ひねくれていたのでしょう。
   いまだにホームパーティに招かれても行きませんし。
(堀)あれは嫌い。
   人に食べているところを見せるなんて品の悪いことは、
   日本では法事だけでしたよ、それまでは。
   本当は『嫌い』なんて大声で言ったらいけませんが。
(タモリ)はっきりと言ったほうがいいですね。
(堀)私の嫌いなものを大好きな方もいるから、遠慮していましたが、
   間もなくあの世に渡りますので、この頃嫌いをやっと言えるようになりました。
(タモリ)私も最近は、嫌なら怒ってもいいんだと思えるようになりました。
(堀)私も怒りたいことばかりです。
   特にこの頃の日本が劣化しています。
   なぜこんなことになったのか終始腹を立てております。

『起承転結の“結”は、恰好つけるためだけのものです』(堀)
『座右の銘もそうですね。所詮、他人の言葉ですから』(タモリ)


(タモリ)明治10年代にイザベラ・バードという英国人女性が、日本の東北や北海道を旅しているのですが(『日本奥地紀行』)、アイヌの村に行った際は、彼らから学ぶことがたくさんあると感激しています。
(堀)日本は、日露戦争で勝ってからおかしくなったのかもしれませんね。
(タモリ)随分昔の話ですが、確かに勝ったかどうかもわからない戦争でした。
(堀)大国ロシアにとっては蚊に刺されたようなものですよ。
革命前夜でそれどころじゃなかったのだから。
(タモリ)向こうには負けた感覚がなかったでしょうね。
だからアメリカの仲介なくして、戦争が終わらなかったわけですし。
(堀)でも勝ったと信じて、日本は自分たちを大国だと思ってしまった。
日本は今でも大国なんかじゃありません。
勘違いし続けているから、これほど劣化してしまったのかもしれませんね。
だってテレビでもバカ笑いばかりでしょう。
あなた様のような知的な笑いが減ってしまった。

(タモリ)確かに「爆笑」を求められますね。
(堀)いたずらに笑っているのよ。
面白くもないのに皆で大口を開けて笑っている。
(タモリ)「いたずらに」っていうのがいいですね。
私も最初の頃は随分、「で、オチは?」と言われたものです。
「オチはありません」と言うと驚かれました。
(堀)皆、恰好をつけたがるのね。
キザなことを口にして、すぐに起承転結をつけたがる。
私には「結」がございません。

〔「死ぬこと」に興味津々〕
(タモリ)「結」はいりませんね。
  決め台詞のひとつで、「お袋のカレーが一番おいしい」というあれ、嫌いですね。
  だってインスタントカレーですから。
  おいしくも何ともない。
(堀)孝行息子と思われたいのね。
(タモリ)そう。そういうところに落とそうとしている。
  座右の銘なんかも同じですが、あれも嫌いですね。
(堀)私も先日、取材で「座右の銘は何ですか」と聞かれて、
  そんなものはございませんと答えましたが、許してもらえませんでした。
(タモリ)私も座右の銘を持たない主義だと言い続けていたのですが、それでもしつこく聞かれる。
  だから「人間にとって一番大切なことは人生である」とか適当なことを口にしていたら、それをありがたがってメモする人間がいる。
  だいたい、大概の座右の銘は他人の言葉ですから。
  座右の銘を持つようになっちゃあ、人間、駄目ですね。
(堀)誰もが口にすることを答えたほうが、皆、安心するのね。
  だから「結」はいらないなんて言ってはいけないのです。
(タモリ)先日、(笑福亭)鶴瓶に、落語の最後で「どうだ、きれいに収めただろう」と言わんばかりにオチを言ってお辞儀をするのは、あれは見え見えでよくないと言ったんです。
  恰好つけているだけだ、と。
  そうしたら鶴瓶、最近は手を振りながら退場しているそうです。
(堀)皆さん起承転結がお好きだから。
  私は「結」なしでこの世から消えていきますが……。
  もう、近々なんですけどね。
  これもまた興味津々で、実は興奮しています。
  初めてですからね、「死」って。
(タモリ)ある本に書かれていた話ですが、
  中国にやたらと前世を記憶している人は3~5年で必ず生まれ変わる。
  死ぬ時に橋を渡るのですが、そのたもとでスープが渡される。
  飲んでしまうと前世の記憶が消え、飲まないと記憶が残る。
  その村人に聞くと、前世の記憶が残っていて良かったかどうか、五分五分だそうですが。
(堀)昆虫や鳥に生まれ変わることはあるの。
(タモリ)ないみたいですね。男女が入れ替わることも少ないようです。
(堀)あなた様は記憶力のいい方だから、そういうお話をよく覚えてらっしゃるのですね。
(タモリ)最近は忘れてばかりです。
  眼鏡の置き場とかね。
  以前は複数のことを同時に思考できたのが、今では難しいですし。
(堀)私などはもうガタが来ていますから、やりたいことができません。
  あなた様も、おやりになりたいことがあったら、誰にも相談しないで即やることね。
  いつ来るかわかりませんよ、そういうばかばかしい自分が。
  最近は、そういう自分を忘れるために、お酒を飲みます。
  昨日もヒレ酒をいただいてきました。
(タモリ)あれ、美味ですね。
  以前、フグのヒレ以外でできないかと、いろんなヒレで試したことがあります。
  行き着いたのは、干し椎茸。
  椎茸をあぶって熱燗を注ぐと、雰囲気は出ます。
  やり過ぎると単なる椎茸のだし汁になってしまうのですが……。
(堀)あら、お好きなのね。
  ずっと気兼ねしてお誘いできなかったのですが、
  では今度フグのヒレ酒をご一緒にいかがですか。
(タモリ)ええ、ぜひご一緒しましょう。

『等伯以来、日本画が好きになりましたね』(タモリ)
『この年でようやく、絵がわかってきました』(堀)

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【平蔵の独り言】
〔「嫌い」なことは大声で言っていい〕
(堀)私も父から、感性の最もすぐれた幼児期にあんなところに行ってはならないと、
  幼稚園に行かせてもらえなかった口ですが、あなた様はどうして。
(タモリ)入園前に、近所の幼稚園を偵察に行ったら、
  園児たちが『♪ぎんぎんぎらぎら』と手のひらを回している。
  『こんなことできない』と行くのをやめてしまいました。

【独り言】
一番可能性が無限大にある時、枠に嵌めることで安心しているのですよね!


【平蔵の独り言】
(堀)でも勝ったと信じて、日本は自分たちを大国だと思ってしまった。
  日本は今でも大国なんかじゃありません。
  勘違いし続けているから、これほど劣化してしまったのかもしれませんね。

  だってテレビでもバカ笑いばかりでしょう。
  あなた様のような知的な笑いが減ってしまった。
(タモリ)確かに「爆笑」を求められますね。
(堀)いたずらに笑っているのよ。
  面白くもないのに皆で大口を開けて笑っている。
(タモリ)「いたずらに」っていうのがいいですね。
  私も最初の頃は随分、「で、オチは?」と言われたものです。
  「オチはありません」と言うと驚かれました。

【独り言】
ウケを狙って、演じているから面白くも何ともない。
何で今年80歳の“徹子の部屋”が毎日放送しているのか!
黒柳徹子の歩いてきた人生の襞とゲストの百人百様の人生のぶつけ合いが楽しい。

黒柳徹子、美輪明宏、五木寛之 みんな傘寿で活躍

還暦になった時、古希を健康でと目指してきたが、
もうすぐ、見えてきた。

今度は傘寿! ちょっと遠いから喜寿を目指して

身近に傘寿で現役の人、

今年 100歳 春には個展を開く画家がいる・・・・・
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by asanogawa-garou | 2015-02-23 15:28 | 人間模様 | Comments(0)